機械技術者の自己啓発支援講座(第25回)
機械技術者のための
 
工業力学入門
 □ 等価慣性モーメント
機械技術者が日常の業務を進める上で必要となる力学の具体的で実践的な活用方法の習得を目指します。
これまで、モータ軸などに直接取り付けられて回転運動する物体の回転軸に関する慣性モーメントの計算方法について学んできました。実際の問題ではさらに、ボールネジでテーブルを駆動させたり、あるいはモータでベルトコンベアを駆動して慣性のある物体を直進運動させる場合などのように、直進運動する物体の慣性を、駆動軸に関する慣性モーメントに等価させて考える必要がでてきます。



8.7 等価慣性モーメント


平行軸の定理を含めて、主な等価慣性モーメントを計算する式を以下に示します。【2】は、いくつかの中間軸を介して慣性物体を加減速させて回転運動させるときの等価慣性モーメントを求める式です。【3】は送りねじで物体を直進運動させるときの送りねじ軸換算の等価慣性モーメントを、【4】は自走式の台車で慣性物を直線運動させるときの駆動車輪軸換算の等価慣性モーメントを、【5】はベルトコンベアで慣性物を直進運動させるときのベルトコンベア駆動軸換算の等価慣性モーメントを求める式です。


 

  

 

 


【解説】
等価慣性モーメントの式は、直線運動の運動エネルギーと回転運動の運動エネルギーが等しいと置いて求められます。例えば、直線運動体の送りねじ換算の等価慣性モーメント式の誘導は次の通りです。
 
■直線運動体の送りねじ換算の等価慣性モーメント式の誘導
 
直線運動する物体の運動エネルギーEは、
 
   E = 1/2 mv2 ・・・・・・・・・・・・(1)
 
ここに、 E :直線運動の運動エネルギー(N・m)
     m :直線運動する物体の質量(kg)
      v :物体の速度(m/sec)
 
一方、回転運動する物体の運動エネルギーEγは、次式で与えられる。
 
   Eγ = 1/2 Iω2 ・・・・・・・・・・・・(2)
 
ここに、Eγ :直線運動の運動エネルギー(N・m)
       I :回転運動する物体の慣性モーメント(kg・m)
      ω :回転角速度(rad/sec)
 
直線運動の運動エネルギーと回転運動の運動エネルギーが等しいと置くと、

    mv2 = Iω2     ・・・・・・・・・・・・(3)
 
ここで、vを送りねじ一回転当たりの速度(m/回転)とすると、ω=2πであるから、(3)式は、
 
   mv2 = I(2π)2     ・・・・・・・・・(4)
 
 従って、
      I = m (v/2π)2      ・・・・・・・・・(5)
 
 
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