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【気ままに雑考マガジン】           第1082号 05月01日(水)(2024年)
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〔本号の目次〕
【01】俳句鑑賞 ~「火の島」(第195号)より(その1)     〔コラム〕
【02】編集後記
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■□■【コラム】■□■
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- 俳句鑑賞 ~「火の島」(第195号)より(その1)-
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鹿児島の月刊俳句雑誌「火の島」(代表:丸山眞氏、会員 140名)の第 195号(2024
年5月1日発行)に掲載された俳句からいくつかを取り上げて、鑑賞させて頂いた。
その1である。

  花あたたかや弘法市の人の波 伊地知いつ子

弘法市は、毎月21日に京都の東寺で開かれる縁日。3月21日に入寂した弘法大師の月
命日に由来する。江戸時代から続く市で、品揃えは多岐にわたり、常時1000~1300店
が出店し、早朝から一日中楽しめるそうだから、人出と賑いが想像される。温暖な春
の陽気のもとだったらなおさらである。いつか行ってみたい。

  水音や綺羅一輪のきらんそう 大重和哉

キランソウは、道端などに生えて紫色の花を咲かす雑草。別名をジゴクノカマノフタ
(地獄の釜の蓋)といい、薬草としての効能から、イシャイラズ(医者いらず)ある
いはイシャゴロシ(医者殺し)の異名を持つそうだ。綺羅一輪という言葉を用いて一
介の雑草を極上の花に昇華させるとともにリフレイン効果を狙った。

  春暁やしばし影絵の桜島 奥山和子

暁の中で桜島を鹿児島市内からみると逆光になるから、山の形が黒々と見えるだけで
ある。それを「影絵」とした。そして「しばし」としたことで、陽が明けてやがて影
絵が影絵でなくなる時間の経過をイメージさせる。春の曙だから、輪郭のおぼろな影
絵に違いない。

  花冷やまだあたたかき母を抱く 川野順子

若い時に母を亡くした作者の回想句と思われる。息を引き取ったばかりの母を抱いた
ときの母の体のぬくもりが身に沁みている。母が亡くなったのは花冷えの頃だったの
だろう。花冷えの中で母の体が暖かい。花の冷えと母の体のぬむもりとの対比。花冷
えの頃になるとひとしお思い出される。

  師の伝ふスローフードや春淡し 田島和子

スローフードは、イタリアで提唱されて始まった、その土地の伝統的な食文化や食材
を見直す国際的な社会運動、または、その食品自体を指す。下五に置いた「春淡し」
は、スローフードの今後の進展を願っているように思える。

  散らしたる玩具と雑魚寝あたたかし 鶴屋洋子

温暖な春の陽気の日に、孫子らが示し合わせて遊びに帰ってきて実家はごった返して
いる。それぞれ玩具を持参したのか、実家にあるのを引っ張り出したのか、思い思い
の玩具で遊んだ後、疲れ果てて寝込んでしまった。客を受ける方は大変だが、心暖か
から孫子らの帰省である。

  空港の復興ピアノ春の風 中村裕人

東日本大震災の際に宮城県七ヶ浜町で被災し、一年をかけて修復されたピアノが仙台
空港の一階ロビーに10日間展示された。誰でも演奏可能だったそうだ。春風の中で聴
く復興ピアノが奏でる音楽。きっと身に沁みたことにちがいない。

  引き鶴へ銀輪隊の声が飛ぶ 藤原壽子

空に引鶴の陣、地に自転車部隊。出水では毎年県ツル保護会のメンバーとともに高尾
野中学校と義務教育学校・鶴荘学園の両ツルクラブ部員が鶴の羽数調査に加わる。自
転車を漕ぐのが羽数調査に参加した生徒たちと想像してみた。荒崎を飛び立ったばか
りの引鶴たちということになるが、鶴を見送る生徒たちの感慨はひとしおであろう。

  春めくや子等もあやつる文弥節 下川信夫

藩政時代に薩摩藩の直轄地だった都城市山之口町の山之口麓文弥節人形浄瑠璃のこと
を詠んだ句だと思われる。同資料館で年4回開催される定期公演のうち一回を地元の
小学生たちが上演するそうだ。山之口には浄瑠璃上演の幕間に演じられる「間狂言
(あいきょうげん)」が残っている。季語の「春めくや」が間狂言に使われるユーモ
ラスな人形たちを思い出させた。なお、句のつくり方として「子等の」とする方が良
いと思う。


☆★☆〔編集後記〕★☆★
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◆皆さま、こんにちは。いつもご愛読頂きありがとうございます。口に絵筆をくわえ
て描く詩画作家・星野富弘さん(桐生市)が4月28日死去しました。78歳。星野さん
は、1970年に群馬大学を卒業し、中学校の体育教師になりますが、クラブ活動の指導
中、頸髄(けいずい)を損傷、手足の自由を失います。1972年、病院に入院中、口に
筆をくわえて文字や絵を書き始めました。
  → https://www.jomo-news.co.jp/articles/-/455702
熊本県芦北町には、富弘さんの作品が常設されている芦北町立星野富弘美術館があり
ます。機会がお有りのときには訪ねてみられませんか。
  → https://washimo-web.jp/Report/Mag-HoshinoMuseum.htm
皆さま、どうか、時節柄、御自愛の上お過ごし下さい。      (WaShimo)
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