機械技術者の自己啓発支援講座(第8回)
機械技術者のための
  
工業力学入門
 □ 力のつり合いと支点反力
機械技術者が日常の業務を進める上で必要となる力学の具体的で実践的な活用方法の習得を目指します。
機械装置の部品に外力が作用すると、どこかが支点となってそれを支えます。そして、支点には反力が発生します。まず、どこが支点になって部品を支えるかを見極め、そして発生する反力を求めます。力およびモーメントのつり合いから、支点反力を求める手順を示します。基本的で重要な項目なので、その手順をきっちり習得しましょう。
 

4.2 力のつり合いと支点反力
ある物体(部材や部品)が静止しているための条件は、

 

 @力がつり合っている(力の総和が0である)ことと
 Aモーメントがつり合っている(モーメントの総和が0である)こと




である。つり合い条件より支点反力(抗力とも呼ぶ)を求める手順を以下に示す。


      

【手順1】 図中に、外力を矢印で書き込む(外力は、大きさと方向がすでに分かっている)。


【手順2】 図中に、支点反力を書き込む(支点反力は、大きさと方向を今から求めようとする力である)。


【手順3】 図中に、xy座標系を書き込み、x軸とy軸の+方向を記入する。
       通常、水平方向をx軸にとり、右向きをx軸の+方向と約束し、
           垂直方向をy軸にとり、上向きをy軸の+方向と約束する。


【手順4】 モーメントの方向(符号)を決め、図中に記入する。
       通常、時計回り(CW方向)のモーメントを+のモーメントと約束する。


【手順5】 力のつり合い式を立てる。


      (1)x方向の力のつり合い(x方向の力の総和が0である
           ΣFx = 0 …………………… @


      (2)y方向の力のつり合い(y方向の力の総和が0である
           ΣFy = 0 …………………… A


      (※ ギリシャ文字 Σ は、シグマと呼び、「足し算した総和」を意味します。上述の文章(1)(2)の表す
          内容を式@、Aのように表すことにします。)


【手順6】 任意回りのモーメントのつり合い式を立てる。
      (任意回りのモーメントの総和が0である。
           ΣM  = 0 …………………… B


【手順7】 @、AおよびBの連立方程式を解いて、支点反力を与える式を導く


【手順8】 導いた式に、具体的な数値を代入して支点反力を計算する


【手順9】 求まった支点反力の値が−(負)の値だった場合、最初図中に書き込んだ方向とは
       逆向きの力である
ことを意味する。

          



       手順5からの手順を具体的に示すと以下の通りである。


       x方向の力のつり合い(ΣFx = 0 )
            RB−P2 =0     ・・・・・・・・・・・・・・・ @


       y方向の力のつり合い(ΣFy = 0)
            RA−P1+RC=0     ・・・・・・・・・・・ A


        A点回りのモーメントのつり合い(ΣM  = 0)
            P1a−P2c−RC(a+b)=0    ・・・・・ B


      3つの未知数(RA、RB、RC)に対して、式が3つ出来ましたので、連立方程式が解けることになります。
      式@より、
             RB = P2


      式Bより
             RC =(P1a−P2c )/(a+b)
  
      これを式Aに代入して、

             RA=P1−Rc
               =P1−(P1a−P2c )/(a+b)
               =〔(a+b)P1−(P1a−P2c)〕/(a+b)
               =(P1b+P2c )/(a+b)

                 
                             Ans   RA=(P1b+P2c )/(a+b)
                                   RB = P2
                                   RC =(P1a−P2c )/(a+b)


              ※ 実際は、求まった答え(式)に具体的な数値を代入して数値で答えを求めます。




〔演習問題〕

【問題4.2】
下図に示すように、A点およびB点で支持されたはりに、P1=600N、P2=150Nの荷重が作用している。つぎの問いに答えなさい。
(1)支点反力を図示しなさい。
(2)鉛直方向(y方向)の力のつり合い式を記述しなさい。
(3)A点回りのモーメントのつり合い式を記述しなさい。
(4)支点反力を求めなさい。

                 

〔解答〕


上述の手順に従って、解いていきます。
【手順1】 外力P1、P2は、すでに問題に書き込まれています。
【手順2】 図のようにA点、B点に支点反力が発生するのでそれぞれRA、RBとし、矢印を記入します。
       問題を解いてみないと、支点反力の向きが上向きなのか、下向きなのかは分かりませんが、取りあえず
       両方の反力とも上向きと考えて矢印を入れておきます。
【手順3】 図のようにX、Y方向を決めて、符号をつけて図示しておきます。
【手順4】 図のように時計回りのモーメントを正(+)と決めて、図示しておきます。
            

【手順5】 横方向(X方向)には、力が一つも作用してないので、力のつり合いは、Y方向についてのみ
       考えればいいです。
         Y方向の力のつり合い(Y方向の力の総和が0である。ΣFx = 0 )


             −P1+RA−P2+RB=0   ・・・・・・・・・・・・・・・ @


【手順6】 C点回りのモーメントのつり合い(任意回りのモーメントの総和が0である。ΣM  = 0 )


             −RAa+P2(a+b)−RB(a+b+c)=0 ・・・・・ A


【手順7】 連立方程式@、Aを解きます。
         式@より、 R=P1+P2−RB
            これを、式Aに代入して、 
            −(P1+P2−RB)a+P2(a+b)−RB(a+b+c)=0 
            −P1a−P2a+RBa+P2a+P2b−RBa−RBb−RBc=0
            −P1a+P2b−RB(b+c)=0


         したがって
            RB=−(P1a−P2b)/(b+c)
            R=P1+P2B=〔(P1+P2)b+(P1+P2)c+(P1a−P2b)〕/(b+c)
                         =〔P1(a+b+c)+P2c〕/(b+c)


【手順8】 導いた式に、具体的な数値を代入して、計算します。
            RB=−(650N×600mm−150N×300mm)/(300mm+500mm)=-431.25N
            R=〔650N×(600mm+300mm+500mm)+150N×500mm〕/(300mm+500mm)
              =1231.25N

     
【手順9】 求まった支点反力のうち、RBは値が−(負)になるので、図示した矢印とは逆の方向の力という
       ことになります。

                                  Ans A点の支点反力は、1231.25N(上向き)
                                      B点の支点反力は、431.25N(下向き)



  
あなたは累計 人目の訪問者です。
 
Copyright(C) WaShimo All Rights Reserved.